中野 雅人
株式会社SMART EXCHANGE 代表取締役社長
略歴:
2013年に株式会社アクトプロに入社。コスト最適化事業の責任者を勤めた後、2016年に外貨両替機事業の立ち上げに参画。事業責任者として、業界シェアNo.1へと成長させる。 2018年、同社取締役に就任。2024年8月には常務取締役に就任。 2025年3月、株式会社GENDAへのグループインに伴い、株式会社SMART EXCHANGE代表取締役社長に就任。
貿易業務の経験から確信。
日本は、世界一の観光国になる。
アクトプロ外貨両替機事業のローンチから関わっていました。当時、日本国内で外貨両替機の認知度は、ほとんどありませんでした。そのため、営業先では「そもそも外貨両替機って何?」「そんなもの置いてどんな良いことがあるの?」という反応ばかりでしたね。
外貨両替機事業に関わる前、私は長らく貿易関連の仕事に従事していました。そのときの経験から「日本は観光のポテンシャルが高い」と思っていました。食文化、季節が移り変わる美しさ、経済発展の著しい東アジア、東南アジアからのアクセスの良さ。日本の観光客数は世界のトップクラスではありません。しかし、リピート率はものすごく高かった。
一方で、日本の外貨両替サービスは、海外と比べると明らかに遅れていました。このギャップを埋めることは、訪日外国人の体験価値向上につながり、日本の観光産業全体に貢献できるのではないか。それが実現できれば、日本は世界一の観光国になれるのではないか。その思いが、外貨両替機事業への参画につながったのです。
認知度を上げるため、様々な施策を打ちました。トラックに両替機を積んで、音楽フェスティバルやイベントに出張したこともあります。全面スワロフスキーで装飾した両替機を原宿に設置したこともありました。「全国の両替機の写真をインスタグラムに全部アップしてくれたら100万円プレゼント」というキャンペーンを企画したこともあります。とにかく、やれることはなんでもやった。その結果、立ち上げからわずか1年で、アクトプロは外貨両替機で業界No.1の地位を築くことができました。

当時使用していた両替車両

全面スワロフスキーで装飾した両替機
コロナ禍で外貨両替機の売上が激減。
それでも、事業を守り抜いた理由とは。
その後、アクトプロの外貨両替機事業は順調に拡大を続けていきました。しかし、2020年に大きな危機を迎えます。新型コロナウイルスの流行の影響で、訪日外国人が激減しました。つまり、外貨両替機ユーザーが、ほとんどいなくなってしまったのです。当然、売上は激減。それでも、アクトプロは外貨両替機事業から撤退しない決断をしました。それは、日本の観光ポテンシャルを信じていたからです。一時的なパンデミックで、その価値が消えることはありません。

そこで、コロナ禍以前は30人いたチームメンバーを、部署異動を活用して一時的に5人に減らすことに。異動をお願いするメンバーには、「またこのチームに戻ってこられるよう、尽力する」と約束しました。
そして2022年、少しずつ観光産業に回復の兆しが見え始めました。同時に、外貨両替機のニーズも戻ってきました。すると、私が声をかけるよりも先に、異動したほとんどのメンバーから「そろそろ、外貨両替機チームに戻りたいです」と希望を伝えてくれたのです。彼らも、私と同じように「日本は、世界一の観光国になる」「アクトプロの外貨両替機で、その夢を叶える」と思い続けていてくれた。その事実がとにかく嬉しかったですね。

外貨両替機事業の、本質的な価値を見出してくれた。
だから、GENDAへのグループインを決めた。
コロナが落ち着き、事業は再び成長軌道に乗りました。2024年時点で、アクトプロの外貨両替機の設置台数は約550台に上り、業界トップを独走していました。
一方で、成長の限界も感じ始めていました。
外貨両替機がある場所では、外貨の両替だけでなく、観光客の飲食や買い物などのイベントが発生しやすいんです。だから、外貨両替機の近隣の店舗が活気づきます。そんな場所を増やすために、1000台、1500台と設置数を増やしていきたいという想いをもっていましたが、当時のアクトプロの資本力では、その実現はかなりハードルの高いものでした。そのハードルを超えるため、M&Aを視野に入れ始めたのです。
投資ファンドを中心に、いくつかの企業とM&Aの相談を進めていきました。正直にお話すると、金額的な面を見ると、GENDAよりも良い条件を提示してくれた企業もありました。それでも、GENDAにグループインすることを決めたのは、片岡社長の「外貨両替機事業をさらに盛り上げて、一緒に観光産業に貢献しよう」という姿勢でした。
GENDAは、世界一のエンターテイメント企業を目指しています。その壮大なビジョンの中に、私たちの「日本を世界一の観光国にする」という夢が重なりました。さらに、これまでGENDAになかった「ツーリズム」という領域を新たに設け、そこに外貨両替機事業を位置づけてくれたのです。単なる外貨両替機の会社としてではなく、観光産業全体に貢献する可能性があるエンタメ企業として、私たちの事業の価値を見出してくれた。それが、GENDAにグループインを決めた大きな決め手でした。
数多くのM&A経験が、
どんな事業にも応用可能なPMIの仕組みを生み出している
そして2025年3月、アクトプロの外貨両替機事業は正式にGENDAの一員となり、社名も「株式会社SMART EXCHANGE」に変更、ロゴも新しく作りました。
統合直後、PMIのためにGENDAのグループ経営管理部のメンバーがSMART EXCHANGEに出向してきました。正直最初は、「文化も歴史も全く異なる会社の人と、うまくやっていけるだろうか」「これまで私たちが築き上げてきた仕組みを、よりよいものを作るためとはいえ頭ごなしに否定をされたらどうしようか」と身構えていました。しかし、その心配は杞憂でしたね。
彼女は、まず私たちの文化や仕組みを理解することから取り組んでくれました。GENDAからすると、非効率に見えることもあったかもしれません。それでも、その文化やルールができた背景を伝えると、しっかりその意図を汲んでくれた。そのうえで、残すべきところは残し、変えるべきところは丁寧にそのメリットを説明してくれたから、私たちも納得して行動に移すことができました。結果として、ほとんど摩擦なく、スムーズにシステムの変更やプロセスの改善が進んでいったのです。
また、GENDAからはもう一人、BizDevのメンバーがSMART EXCHANGEに出向しています。彼に最初に取り組んでもらったのは、業務の最適化でした。為替レートの設定、機械のメンテナンス巡回ルート、資金フローの見える化など、どれも事業の根幹を支える大切な部分です。
最初は私がひとつひとつ業務の説明をしながら、一緒に業務改善案を策定していたのですが、しばらくしたら私も思いつかないような提案をしてくれるようになりました。たとえば、警送ルートの最適化は彼が提案し、実現したものです。外貨両替機のメンテナンススタッフは、1日に10件以上の両替機を巡回します。複数のスタッフが同時に動く場合の最適ルートをシステムで自動計算できるようにし、効率よく巡回できる仕組みを整えてくれたのです。これには驚きましたね。
さらに、私だけでなく、現場のメンバーの声にも真摯に耳を傾けてくれるんです。現場の声を丁寧に拾い、データを分析し、効率が上がる答えを示してくれる。そのプロセスが繰り返されるうちに、一般的な「親会社と子会社」という関係以上の信頼関係が生まれていきました。
なぜ、外貨両替機については全くの未経験だったGENDAが、ここまでスムーズにPMIを進められたのか。おそらく、様々な業種、事業の会社とのM&Aを、数多く経験しているから、どんな事業にも応用可能なノウハウが蓄積されているのでは、と考えています。

来期は、夢の1500台へ。
見えてきた「世界一の観光国」の景色。
GENDAにグループインしてから9ヶ月。2025年12月現在、SMART EXCHANGEの外貨両替機はさらに増え、全国に約900台設置されています。そして私たちは来期、「設置台数倍増」を目指しています。
ほんの少し前まで、1000台、1500台と増やしていくのは「無謀な夢」だと思っていた私たちが、なぜここまで思いっきりアクセルを踏めるようになったのか。それはGENDAにグループインしたことで、「見える化」と「DX化」が進んだことが大きな理由だと考えています。
長年の貿易関連の業務経験や、約10年間外貨両替機事業に携わってきた経験から、「こうすれば、外貨両替機事業はさらによくなる」というイメージはありました。ただ、それを私以外の人でも理解できるように言語化したり、具体的な仕組みに落とし込んだりはできていませんでした。
でも、GENDAから出向してきたBizdevチームは、SMART EXCHANGEの業務フローを徹底的に分析し、データを見える化してくれました。どこに資本を投下すれば、大きなリターンが得られるのか。どこを改善すれば、規模を拡大してもオペレーションが破綻しないのか。そういったことが明確になり、DX化も一気に進んでいきました。だから、「設置台数倍増」が実現可能になったのです。
そして今、新しい挑戦も始まっています。GENDAの「ツーリズム」領域を担う会社として、観光産業全体に具体的にどう貢献していくのか。そんなマーケティング施策が、2025年11月から本格的に動き出しました。この挑戦は、SMART EXCHANGEのメンバーにとっても大きなモチベーションになっています。もともと、「日本を世界一の観光国にする」という志を持って集まっている人たちばかりですからね。
いずれは、グループ内での人材交流をもっと進めていければと思っています。現在はGENDAから人材をお借りして、事業の手助けをしていただいている状況です。しかし、将来的にはSMART EXCHANGEの人材も、GENDA内の他事業でも活躍できる人材に育てていきたい。そして、人材交流を通じて互いの事業を盛り上げて、社会に還元していきたい。GENDAに入ったからには、そんな好循環を生み出していけたら、と思っています。

紹介したM&Aの概要
株式会社アクトプロ。国内650箇所以上で外貨両替機事業を展開。(GENDAがM&Aを発表した2024年12月時点)2025年3月にGENDAに参画し、社名を株式会社SMART EXCHANGEへ変更。
