太田 翔一郎
株式会社アレスカンパニー 代表取締役 社長
略歴:
早稲田大学人間科学部基礎科学科卒。2006年、株式会社ファンフィールド(現・株式会社イオンファンタジー)入社。バイヤーとして商品の企画・購買を担当し、投資管理を行う。商品企画では当時No.1ユーチューバーの景品化を日本で初めて実現。2016年退職後、マーケティングリサーチ事業、宿泊事業、リユース事業等を経験。2018年9月、株式会社GENDAに入社し、商品部長に就任。機器や商材の仕入れを担当。2020年3月、同社レンタル事業責任者兼商品部長に就任。機器商材の仕入れ、企画開発、レンタル事業を統括。
2021年8月、株式会社GENDA Games(現・株式会社GiGO SOLUTIONS)取締役 営業部長に就任。2024年6月、株式会社アレスカンパニー代表取締役副社長に就任。同年9月から現職。
景品も、機械も。一社でぜんぶそろう商社へ。
アレスの社長になった今が、一番おもしろい。
アレスカンパニーの社長という重責を任せていただいてから、もうすぐ丸2年。
責任ある今が、本当に楽しいんです。
アレスカンパニーの主要事業は、アミューズメント施設向けの景品と機械の企画販売やレンタルです。景品の提案は、カタログを持ってお客さまを訪ね、品目を直接ご案内する。その昔ながらのスタイルを、今も続けています。品目は、多いときで2,000~3000種類。もともと点数は多かったのですが、近年さらに増えました。これだけの数をそろえる会社は、そう多くありません。
私たちは、景品や機械をつくるメーカーと、オペレーター、つまりゲームセンターなどの施設を運営する会社の、ちょうど間に立っています。業界で「ディストリビューター」と呼ばれてきた立場です。どんなジャンルの景品でも、一社でそろえられる。それが、アレスの強みです。 景品を扱う会社からディストリビューター、今は商社。名乗りは変わっても、根っこはずっと同じです。

どんなものにも新たな価値を載せられるのがエンタメ。
原点の職場で、片岡さんと出会った。
私のキャリアの原点には、いつも「エンタメ」がありました。
大学では、人間工学を専攻していました。簡単に言うと、人間に合わせてモノや環境を設計する学問です。人間工学が扱うのは、たとえば使う人の「快適さ」。ただ、快適さだけが、ものの価値ではありません。これから何にでも付加価値になるのは、エンタメだと思ったんです。どんなものにも、エンタメは組み合わせられる。日本のアニメのように、その価値はまだまだ広がる。そう考えて、この業界を選びました。
新卒で入社したのは、株式会社ファンフィールド(現・株式会社イオンファンタジー、以下「イオンファンタジー」)です。ショッピングモールなどでゲームコーナーを運営する会社で、さきほど話した「オペレーター」側にあたります。当時はバイヤーとして、施設に置くゲーム機の仕入れを経験。その後、新規事業の企画や立ち上げを担当していました。
新規事業で力を入れていたのが、話題になった”人”にちなんだ景品を、旬のうちに最速でつくる挑戦です。つくった景品を、話題の本人に取り上げてもらう。それを見たファンが集まり、商品が売れていく。当時はまだ珍しかったこの売り方を、一足先に築けました。
この挑戦に踏み込めたのは、片岡さんの存在が大きかったと思います。この新規事業のとき、私は片岡さんの下で働いていました。当時イオンファンタジーの社長、現GENDA代表取締役社長CEOです。前例のないことでも、まずはやってみな、と任せてくれる。万が一失敗しても、挑戦したこと自体を認めてくれる。うまくいけば、なおさらです。
そして、片岡さんが当時から大事にしていたのが、現在のGENDAのValueで「Speed is King」です。とにかく、先に動く。動きながら考える。振り返ると、こうした環境があったから、私も失敗を恐れずに、前へ進めたのだと思います。
その後、外の世界では自分がどこまで通用するのか試してみたくなり、2016年にイオンファンタジーを退職しました。
取引先ゼロ、口座ゼロからレンタル事業を立ち上げ。
目指したのは、メーカーもお店も報われる「三方良し」。
退職後は、2社を経験しました。外の世界で力を試すことができた感覚がありましたが、ちょうどそのころ、片岡さんから連絡をいただいて。それがきっかけで2018年、設立されたばかりのGENDAに入社しました。
GENDAの祖業は、アミューズメント機器のレンタル事業です。私はその立ち上げに携わりました。メーカーからゲーム機を仕入れて、ゲームセンターに貸し出す。 やること自体は、イオンファンタジー時代と大きくは変わりません。ゲーム機を仕入れるために、メーカーごとに「御社の機械を扱わせてください」と依頼し、取引口座を開いてもらうんです。ただ、全国に何百店舗もある会社の看板があった頃とは、勝手がまるで逆でした。以前なら最初から当たり前のようにあった取引の信用も、口座も、機械を買うお金も、立ち上げたばかりのGENDAには一切ありません。一社ずつメーカーへ説明し、少しでも多くの取引ができるようお願いする日々でした。

「この事業は必ず三方良しとなり、大好きなこのアミューズメントの業界に役に立つはず」という信念をもっていたので、根気強くお伝えして、少しずつ事業を広げていきました。
アミューズメント機器は、1台100万円以上するものも少なくありません。売り上げが購入金額を上回るには、時間がかかります。そのため、資金力のない会社には、なかなか手が出せません。だからこそ、双方の間に立つ存在が要ります。メーカーから機械をまとめて仕入れ、さまざまな会社に届ける。この役割を担うのが、「ディストリビューター」です。このディストリビューター、以前はたくさんありました。しかし近年どんどん数を減らし、メーカーとゲームセンターは直接やり取りするのが主流となっていました。その理由のひとつが、間に会社が挟まることによる「不透明性」です。自分たちの機械が、最終的にどの店に置かれ、どう使われるのか。それが分かりづらくなるため、直接取引が増えてきました。
その結果、資金力のない会社が、そもそも参入できなくなってしまった。メーカーの販売先も限られていきました。これでは、業界が縮小していってしまう。業界全体で、少しずつそんな危機感が芽生え始めていました。
そこで私たちが、あらためてディストリビューターの役割を担い直すことにしたのです。目指したのは、先ほども話した「三方良し」。リスクを私たちが引き受けることで、メーカーは機械を販売できる。ゲームセンターは、限られた資金で求めていた機械を設置できる。それを、どこに何が流れているのかが見える、透明な取引でつなぐ。それを一つ一つ積み重ねていったことで、少しずつ信頼を得ていきました。
アレスの良さはそのままに。
そこへ、GENDAの強みを、どう重ねていくか。
やがてアミューズメント機器のレンタル事業は、株式会社GENDA Games(現・株式会社GiGO SOLUTIONS
)という会社になり、私は取締役を務めました。そして2023年10月、アレスカンパニーがGENDAにグループインします。アレスが扱っていたのは、クレーンゲームなどに入れる景品。取り扱うものは違えど、GENDA Gamesもアレスも、メーカーと店舗のあいだに立つディストリビューター。同じ立場の会社でした。
「アレスの副社長に」という話をいただいたのは、それからしばらくのことです。
景品づくりは、かつてイオンファンタジーで新規事業として打ち込んだ、私の大事な経験のひとつです。もう一度その世界に関わりたい気持ちがありましたし、何より、機械を手がけてきた私の経験がアレスカンパニーで活かせるかもしれないという自負もありました。景品と機械、この2つは、お客さまの層が違います。だからこそ一緒になれば、それぞれのお客さまに、機械と景品の両方をご提案できるようになる。そこに大きな可能性を感じて、この話をお受けしました。
そして2024年、6月に副社長、9月には社長に就任しました。私がGENDA Gamesで率いてきた機械やレンタルの事業も、アレスカンパニーへと合流。あのとき思い描いた「景品と機械、両方を持つ会社」が、こうして現実になりました。
とはいえ、アレスカンパニーがGENDAにグループインして、まだ1年足らず。オフィスが千葉の松戸から東京の汐留に移動するなど、社員の環境は大きく変化しました。そして、経営体制も大きく変わった。戸惑いや不安があって当然だったと思います。
たとえば、社内で使用するツール。グループインしてすぐ、GENDAの標準に揃えてしまえば、連携はとりやすくなります。でも、それまで使い慣れてきたものから急に変わると、ただでさえ落ち着かない環境で、混乱を招きかねません。だからまずは新しい環境に慣れることを優先し、移行するのは数カ月たって落ち着いてからにしました。
また、アレスの強みとなっているのが、昔から続けてきた営業方法です。各店舗を回り、お客さまに寄り添って、一緒に品目を選ぶ。正直、時間も手間もかかるやり方です。「GENDAにグループインしたからには、営業手法もDX化して、より効率的に行えるようにすべきでは?」という見方もあるかもしれません。でも、この昔ながらの方法が、お客さまからは「見やすい」「選びやすい」と好評なんです。
アレスのメンバーの声、そしてグループイン前から懇意にしてくださっているお客さまの声を聞きながら、焦らず一歩ずつ進めていく。その積み重ねがあったから、アレスカンパニーの良さはそのままに、GENDAの強みを取り入れていけたのだと思います。

頼るところは頼り、決めるところは、自分で決める。
「エンタメの総合商社」を、自分たちの手でつくっていく。
経営者をしていて心強いのが、GENDA本社の手厚いサポートです。会社を経営するには、人事、総務、労務、採用など、事業を支える部門が欠かせません。そこを、GENDA本社がまとめて担ってくれます。着任時に20人ほどだった仲間も現在(取材当時)は2倍以上に拡大し、45人を超えました。GENDAの採用担当も積極的に動いてくれて、今期末には、60人規模になる見込みです。これだけの急拡大に対応できるのも、その後ろ盾があってこそ。おかげで、事業に集中できていると思います。
こうしたサポートの中でも、個人的に特にありがたい、と思っているのが「財務」の支えです。機械を仕入れてお貸しするには、先にまとまったお金が必要になります。資金力がなければ、せっかくの引き合いがあっても、仕入れが間に合わず、応えきれないこともある。お金の工面は、どの経営者も頭を悩ませるところだと思います。でも今は、GENDAの財務が支えてくれる。これは、グループインの大きなメリットのひとつだと思います。
一方で、会社が大きな組織に入ると、支えが手厚いぶん、経営の自由はなくなるのでは。そんなイメージを持つ方も、少なくないかもしれません。経営のことで、相談したいことはある。でも、大事な判断は、自分で決めたい。多くの経営者が、そう思っているはず。私の場合、その肝心なところは、自分で決められています。何をするにも、いちいちお伺いを立てる。そんなことは、今のところありません。
そんな環境だからこそ、原点にある思いを、まっすぐ追いかけられます。新卒のころに感じた、「エンタメは、何にでも付加価値になる」という感覚。それは、今も変わりません。エンタメと結びつけば、どんなジャンルにも挑める。GENDAが大切にしている「Speed is King」というValueが更に背中を押してくれる実感もありますね。
今、アレスカンパニーが目指しているのは、「エンタメの総合商社」です。景品を扱う問屋から、エンタメを軸に、あらゆる商材を手がける会社へ。たとえば、昨今人気のプライズゲーム。そこに、お菓子や日用品のようなエンタメ以外の商材を取り入れれば、新しい楽しみ方が生まれます。
商社であるからこそ、扱うものに、決まった枠はありません。おもしろいと思ったことを、自分たちの手で、まっさきに始めていく。GENDAと一緒なら、それもまったく夢ではないと思います。

紹介したM&Aの概要
株式会社アレスカンパニー。1999年設立。創業者の引退により前経営者が事業承継。その後、現在は GENDA 欧州事業責任者とGENDA Europe Ltd. CEOを務める大富涼氏が2022年3月に事業承継型M&Aにより経営権を握る。2023年10月31日に全株式をGENDAに譲渡し、グループ入りする。