#2 GENDAグループM&A第1号の「SPSS」100% 株式譲渡の事業承継は大成功【エスピーエスエス】

株式会社エスピーエスエス(SPSS)
非常勤取締役
小野道夫

略歴
青森県 弘前市在住。約40年に渡りセールスプロモーション業務に従事。インストアプロモーションを専門とし、スーパーの催事やキャンペーン、イベント運営などに尽力する。2001年10月に株式会社エスピーエスエスを設立、代表取締役社長に就任。2019年より現職。

15期連続黒字でも伸び悩む売上。
事業承継したいという想いも。

2001年10月にSPSSを設立し、スーパーのインストアプロモーション(店頭販促)を柱に事業を手掛けていました。例えば歳末大売り出しの装飾デザインやレシートくじなどですね。主な取引先の一つがイオングループでしたので、そのご縁により片岡会長がイオンファンタジーの営業企画担当の時代からお付き合いがあり、非常にお世話になっていました。イオンファンタジーはショッピングモール内のアミューズメント施設などを運営する会社で、営業企画関連の仕事を多くやらせていただきました。

会社の業績は順調で、立ち上げてから15期連続黒字でした。ですが売り上げは5億円を達成してから伸び悩み、従業員数も12〜13人で足踏み状態という具合で、成長が難しくなっていると実感したのが正直なところです。当時、私は60歳ぐらいでしたが、もともと65歳までに後継者に経営を移譲しようという腹積もりを持っていました。

そんな中で16期目に初めて少し赤字を出し、ショックを受けました。幸い翌年には持ち直したのですが、「今後、年老いていく中でだんだん頭が堅くなり、頑固になっていくだろう。だったら前々から考えていた事業承継の問題に真剣に取り組もう。」と決心したんです。会社を子どもに見立てると、生まれてから高校を卒業する18歳まで面倒を見ればいいだろうという心境になっていました。

利益を出し、成長を続けられる承継先を探す。
その答えがGENDAだった。

ただ、事業承継といっても身内への承継は選択肢にありませんでした。会社というのは利益を出し、成長を続けていくものだと思っていますから、それを確実に実現できる承継先を探さなければなりません。

そう考えていた矢先、当時イオンファンタジーとイオンエンターテイメントの社長を兼務していた片岡会長が2018年5月に退任し、GENDAを設立することになりました。片岡会長は常々「世界一のエンターテイメント企業をつくる」と公言し、将来に期待が持てると感じていました。会社の存続・成長にとってGENDAの傘下に入るのが最善だと考え、片岡会長に相談し、1カ後の6月に株式を100%譲渡してGENDAグループのM&A第1号になったわけです。何にしても1番はいいですね(笑)。SPSSは、会社の規模は小さいですが、M&A第1号ということで記録に残ります。

株式譲渡後は非常勤取締役に。
従業員の雇用を守る約束は果たされた。

株式譲渡後、SPSS2代目となる新社長には現GENDA CBO(最高ブランディング責任者)の北川稔氏が就任しました。私が引き続き取締役を、という話も出ましたが、経営の一線から身を引き、非常勤取締役として週1〜2回出社する程度にとどめることにしました。新しくグループの傘下に入るのだから組織も一新したほうがいいし、新社長と創業者の2人が毎日揃って社内にいると従業員もやりづらいだろうと考えたからです。

従業員の雇用継続は株式譲渡の条件だったので、引き続き働いてもらっています。株式譲渡前からの取締役である永石真希子氏にも、株式譲渡後も取締役として経営に携わってもらい現在に至っています。

グループ企業からの仕事で事業拡大。
今期は売り上げ倍増の10億円を見込む。

株式譲渡後の事業は、従前からのイオンファンタジー、エコスなどとのお付き合いに加え、映画館を運営するイオンエンターテイメントからの仕事が増えました。

大きく事業が拡大したのは、GENDA GiGO Entertainment(以下、GGE)がGENDAグループ傘下となってからですね。GGEから受けるゲームセンターの開店関連のイベントや装飾デザインの仕事、それからチラシやリーフレット作りの仕事が非常に増えました。これらは株式譲渡前からSPSSが得意とする分野で、インストアプロモーションで培ったノウハウが大いに生かされています。また、2代目北川社長に続く3代目社長は旧セガ エンタテインメント出身の室田明史氏ですが、プライズ(クレーンゲーム用の景品)やイベント商品の開発を得意とし、売り上げを大きく伸ばしています。

現在、SPSSはアミューズメント施設をはじめとするエンターテイメント業界を中心に大きく3つの事業、①セールスプロモーション事業、前述の②プライズ事業、③広告事業(映画上映前の広告の販売等)を展開しています。②と③は株式譲渡後に新たに加わったもので、今期の売上は株式譲渡以前の2倍を見込めています。GENDAグループに入ったからこその成長ですし、株式譲渡しなければコロナ禍の影響もあり、SPSSの経営は今頃風前の灯だったかもしれません。GENDAグループへの株式譲渡は大成功だったと実感しています。

取引先から常に必要とされるのが会社の存在意義。
規模は小さいながらもグループの一翼を担えるように。

GENDAグループの一員になったことにより、今年(2023年)7月28日に東京証券取引所グロース市場への株式上場という、晴れがましい光景を目の当たりにできました。GENDAグループの目指すところは「世界一のエンターテイメント企業」ですから、そのステップの1つである上場という大きな節目に立ち会えた喜びは何にも替え難い経験です。

今後のSPSSに期待するのは、規模の大小は別にして、GENDAグループにしっかりと貢献できる存在であって欲しいということです。株式譲渡前からの取引先からも、グループ内のGGEからも常に必要とされ続けることがSPSSの存在意義だと思います。元オーナーそして現非常勤取締役として、世界一のエンターテイメント企業の一翼を担える存在になることを願っています。

紹介したM&Aの概要

株式会社エスピーエスエス(SPSS)。株式譲渡前のオーナー社長だった小野道夫氏が2001年10月に設立。イオングループや株式会社エコス(東京都・昭島市)を主な取引先として、スーパーマーケットのインストアプロモーションを主軸に事業展開していた。2018年6月にGENDAに全株式を譲渡しグループ入りする。