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公募増資は、なぜこのタイミングだったのか?

「もう少し待って、株価が回復してから実施すべきだったのではないか」というご意見も承知しています。

そのうえで、今回の公募増資に踏み切ったのには、大きく分けて2つの要因があります。それぞれご説明させて頂きます。

① 実際に試算すると、実は足元の株価は将来的なEPSの差への影響が僅少であること

まず、完全に透明性を担保するため、Q1に添付した試算用のExcelをご参照ください。株価のInputは公募価格の969円となっておりますが、仮に+20%上げたとしても、結果として得られるEPSの上乗せ分が数%しかない事がお分かりいただけると思います。

この理由は、資金調達側(借入・増資)のコスト対比、資金運用側(M&A)の利回りの絶対値が十分に高いためです。つまり、資金の運用利回り>>調達コストとなっているためです。

その理由は、当社が規律の効いたM&Aを続けているためです。具体的には、M&Aによって連結される利益やキャッシュフロー対比、適切なバリュエーションでのみM&A(資金運用の利回りが十分に高い)を重ねております。また、そのうえで更に、適切な範囲で借入を極大化(資金調達のコストを極小化)しているため、これが顕著に表れています。

結果的に、多少の資金調達コストの増減が、大勢に影響を及ぼさなくなります

翻って、公募価格969円だけを見れば、前回(2024年7月)の公募価格1,021円と比較して▲5%水準での実施となりました。しかし当社は、上記の試算に基づき、短期的な価格差は中長期的な全体から見れば十分吸収可能であることから、今回のタイミングでの公募増資に至りました。

なお、前述のとおり、当社はEPSの成長を持って取り組んでおりますが、それを理由に資金調達における規律を緩める意図は一切ございません。むしろ、株式による資金調達を行う際には、可能な限り高い株価で実施することが、既存株主の希薄化を最小限に抑える観点からも極めて重要であると認識しております。

その観点であっても、今回のタイミングでの公募増資に至ったもうひとつの大きな理由について、次の②にて記載させて頂いております。

株価の回復は予測不能である一方、目前のM&Aを逃す機会損失は確定的であること

株価が回復するかどうかは、特にマクロ環境に大きく左右され、予測不能です。一方で、目の前にある有望なM&A機会を逃すことによる「EPS成長の機会損失」は確定的です。

前述の通り、仮にリスクを取って株価が20%上昇するまで待ったとしても、EPSの上乗せ効果は数%程度にとどまります。一方で、その間にEPSを向上させられるM&Aの機会を逃すことは確定します。結果として、リスクを取って待つメリットの数%の上乗せ効果を帳消しが確定します(また、繰り返しですが、株価が上がるか下がるかは予測不能です)。

つまり、株価の回復を待つ「不確実なメリット」と、M&A機会の逸失という「確実なデメリット」とを天秤にかける構造であり、定量的な試算のもと、後者のインパクトの方が有意に大きいという判断に至りました。

また、公募増資は法令の要請上、未公表の重要情報(M&Aなど)を保有したままでは実施できません。そのため、M&Aを連続的に行う当社のような企業では、公募増資を実施するために一時的に全ての案件を“止める”必要があり、通常の企業に比べて実施タイミングの捻出が極めて難しいという実務上の制約があります。

このように、公募増資の判断とは、「EPS成長の機会損失」と表裏一体であり、その機会を逃すことの影響を慎重に天秤にかけて判断する必要があるのです。

更に難易度を上げるのが、M&Aの機会は「当社の都合」でいつでも出現するものではなく、売却企業側の意向も大きく影響するため、当社にとって都合の良いタイミングで調達機会を自由に選べるとは限らない、ということです。

このような制約・構造の中において、私たちは以下のように判断しました:

足元の株価変動がEPSに与える影響は限定的であり、

株価の回復には不確実性が伴う一方で、

今後のEPSを押し上げ得るM&Aの機会損失は確定的である

この3点を総合的に勘案し、役職員一同で真摯に議論を重ねた上で、このタイミングでの公募増資が最も合理的であるとの結論に至りました。

事実として、当社は現在、役職員が全体の約20%の株式を保有しており、外部の株主様と完全に同じインセンティブ構造の中で経営を行っています。加えて、外部株主の皆様にはまだ開示されていない成長ポテンシャルを見通せる立場にあるからこそ、より確信をもってこの決断を下す責任があると考えました。

現在も、魅力的なM&A案件が多数パイプライン上にあり、既存の借入余力のみでは到底すべてに対応できない状況が続いておりました。そうした中で、今回の公募増資により、財務レバレッジを一段と高め、M&A戦略をさらに加速させるための盤石な資金基盤を再構築することができました。 今後も、公募増資および売出しの後も、役職員が引き続き大株主として「株主の代表」としての立場で経営に関与し続けること、そして、新株予約権を含む長期インセンティブ設計のもと、真の意味で“株主とともにある経営”を体現してまいります。

Tag: 2025年5月30日 回答