当社が行っているロールアップM&A戦略の実態、及びそれに伴う非連続な(キャッシュフロー増大による企業価値向上を通じた)株式価値の成長を、投資家の皆様に言語化する目的で、Fidelity社を中心に海外機関投資家のキャリアを有するCGS社代表取締役の信実氏にご作成頂きました。
その結果、M&Aの企業として重要な「投下資本」に対する「投資回収」の指標(=Incremental ROI)が同業他社対比で最高水準である一方、成長率を加味したEV/EBITDAマルチプルを比較すると、同業他社対比で約70~80%ディスカウントされている、という結果となりました。
同業他社の選定と成長率予想はCGS社に基づく一方、上記分析は実際の時価に基づく機械的な計算結果であり、投資家様へのアップサイドを定量的にご提示できたと考えております。以下にて、具体的な要旨を申し上げさせて頂きます。
当社はM&Aを本業とする会社として、上場以来一貫して「適切なバリュエーションでのM&A」を強調して参りました。具体的には、M&Aによる「投下資本」(≒対象会社のEV)に対する「投資回収」(≒対象会社のEBITDA)を重視していることを強調しておりました。
しかし、これまでのIRでは、M&A後の対象会社のEBITDA成長にのみ焦点を当てておりました。たしかに、対象会社のキャッシュフローが増加し投資回収が進むことは一方的に良いことですが、これはあくまで手段であって目的ではなく、最大の目的である「投下資本」に対する「投資回収」の効果測定ができておりませんでした。
そこで今回のレポートでは、「投下資本」に対する「投資回収」の効果測定をするため、対象会社個社ではなく、GENDA連結の(M&Aによる)バランスシートの増加分(≒EV)を「投下資本」、(M&Aによる)営業キャッシュフロー(≒EBITDA)の増加を「投資回収」、として「営業キャッシュフロー増加額 ÷ 投下資本増加額」(=「Incremental ROI」)を測定し、同業他社と比較頂きました。
同業他社は「成熟市場でのロールアップ型のM&Aを成長戦略としているグローバル企業(CGSレポートp19)」と定義されております。同業態を大規模に行う企業は米国に多数存在し、その中でも産業廃棄物サービスでロールアップM&Aを行うWaste Management(Incremental ROI約20%)、葬儀サービスでロールアップM&Aを行うService Corp International(同約8~9%)、害虫駆除業界でロールアップM&Aを行うRollins(同約25%)、及びM&Aでの成長を実現する代表企業としてのDanaher社(同約10%)が採用されております。
対して、当社の同指標は約25%であり、同業他社比較で最高水準という分析結果となりました(「ロールアップ型のM&A成長戦略をとるグローバル企業と比較しても非常に優秀な数字(p18)」)。従って、同業他社対比でバリュエーションが割高であっても正当化されることが定量的に示されています。
しかし、成長率対比でのEV/EBITDAマルチプルを計算すると、Waste Managementが1.5x、Service Corp Internationalが1.1x、Rollinsが2.5xであるところ、当社は0.3xとなっていることが指摘されています(「比較対象企業より約70~80%ディスカウントされており、客観的に見て割安感が強いと分析している(p1)」)。
成長率対比でのEV/EBITDAマルチプルとは「EV/EBITDAマルチプル÷EBITDA成長率」で計算されます。似たようなアプローチとして「P/Eマルチプル÷EPS成長率」で計算されるPEG(Price/Earnings-to-Growth)が一般的ですが、この分析をEBITDAで行ったものとなります。この考え方の背景にあるのは、成長率が高い会社の方が高いマルチプルが正当化される、という考えです。具体例を挙げさせて頂きます。
仮にA社とB社が同じEBITDA(例:100億円)であるとき、A社はEBITDA成長率が毎年10%(110億円、121億円、133億円・・)で成長するのに対し、B社が同20%(120億円、144億円、173億円・・)で成長する場合、3年だけでもA社のEBITDA成長は1.3x、B社は1.7xと大きな差が出るため、企業価値はA社<B社が正当化されます。結果的に、現時点におけるEBITDAがA社=B社でも、企業価値はA社<B社であることから、両者の割り算で計算されるEV/EBITDAマルチプルもA社<B社が正当化されます。
また、成長率だけでなく、キャッシュフロー創出力を測定した数値(CGS社レポートに於けるIncremental ROI、ROIC、営業CF転換率など)などが高ければ、高いマルチプルも正当化されます。
なぜなら、EBITDAはキャッシュフローに近い概念ですが、実態的にはそこから(税金と)事業を維持するために必要な投資(メンテナンスCAPEX)を考慮した定常的なフリーキャッシュフローこそが、理論的な企業価値に影響するためです。つまり、EBITDAが同額でも、EBITDAからキャッシュフローへの転換率が高い企業の方が、理論的な企業価値は高くなるためです。
その観点でCGSレポートでは「同社の投下資本は、2022年1月期から2024年1月期まで約155億円増加。これに対し、同社は営業CFを同期間で約29億円、2025年1月(CGS予想)まで含めると約38億円積上げる計算になる。つまり、過去のIncremental ROIは約20~25%のレンジであり、これはCGSの長年の投資経験上優秀な数字である(p18)。」と評価頂いております。
また、その前提に基づいた上で「GENDAのCGS予想モデルに基づけば、同社の利益成長あたりの期待FCF総出力は、Rollinsレベルとはいかない(オーガニック設備投資の必要性とCash ROICが大きく異なる)までも、Waste Managementのそれと比較的近しい数値である。(中略)現在株式市場がGENDAに許容しているEBITDA 1%あたりのマルチプル(0.3x)は、同社の中長期的なFCF総出力を客観的に見ても割安であり、今後の期待成長率を踏まえれば現在のEV/EBITDA倍率には大きな拡大余地が存在し得る(p20)」という分析を頂いております。
なお、CGS社のレポートではEV/EBITDAマルチプルを中心に、徹頭徹尾キャッシュフロー創出力に基づいた評価が行われておりますが、当社としてもM&Aを本業とする会社の評価には(一般的なPERに対比して)キャッシュフローに基づくバリュエーションであるEV/EBITDAがより経営実態を表しており、適していると考えております。
なぜならば、ロールアップM&A型の企業は、自社及び対象会社のキャッシュフローに依拠して資金調達をしてM&Aを繰り返しますが、資金調達ができないとM&Aができなくなり、結果的に企業価値や株式価値の成長が止まってしまいます。
換言すると、キャッシュフロー自体が成長の源泉であり、今後の成長可能性を示唆する指標となります。キャッシュフローを簡易的に示すうえで最も一般的な指標であるEBITDAを、当社の重要視するKPIとして今後も投資家の皆様にお示しして参ります。
なお、PERについては、キャッシュフローに基づいた評価をする観点、及び海外企業と比較する観点から、当社ホームページ記載の(疑似的なIFRSの当期利益である)「のれん償却前当期利益に基づくPER」がより実態を表していると考えておりますので、ご参考までに当社ホームぺージに記載しております。