M&A企業としてのれん償却費が増加する中、営業利益ではなくEBITDAをKPIとする理由

結論、のれん償却費が控除された利益指標を使用して企業価値を判断することは、後述の理由から、企業価値を二重で控除してしまうことになるためです。

まず、オーガニック成長のみをする通常の企業では、営業利益で測ることが適切だと考えています。なぜなら減価償却費は、設備投資により「実際に」今後もキャッシュアウトが続くものであるためです。本来的には営業利益に足し戻す必要は無いと考えています。

一方でのれん償却費については、既に取得した株式取得にかかる追加のキャッシュアウトは無いものとなります(設備投資は当然致しますが、減価償却費について上述の通りの整理です)。その点に於いて、減価償却費とは大きく異なります。

この違いにより、後述の通りのれん償却費を業績の分析の際にも控除されると、企業価値から二重で控除されていることになります。なぜなら、キャッシュアウトは取得完了時に既に終了し、それは既に現金の減少か負債の増加でバランスシートに織り込まれ、設備投資と違って将来的に発生しないためです。

会社の本質的な企業価値を測るDCF法では、未来永劫発生するフリーキャッシュフローを全額合算したのち、最後にバランスシートの純有利子負債を控除して株式価値を計算しますが、まさにその純有利子負債に反映済みなわけです。それにも拘わらず、M&Aの会社において営業利益でその後を判断するのは、二重で価値が控除された状態になってしまうのです。

M&A企業は、のれん償却費だけがオーガニック成長をする企業と異なるため、のれん償却費の足し戻しを強調しています。GENDAもその点では、営業利益にのれん償却費を足し戻した数値であれば、検査指標として適切であると考えています。つまり、厳密にはEBITAとなります。

また、オーガニック成長のみをする企業は、基本的にのれん償却費はゼロであるため、ある意味では営業利益に(ゼロの)のれん償却費を足し戻した数値として営業利益=EBITAであるとも言えます。

しかしEBITAは、汎用的なデータベースで表示される指標ではないため、一般的な指標であるEBITDAでの判断を推奨させて頂いております。

また、以上は支配権を獲得する前提での全株式ベースでの価値算出の考え方ですが、支配権が無い1株当たり価値で見る際には、PERを参照し、同業他社と相対的に比較されることが一般的であると考えています。

M&A企業のバリュエーションをPERで見られる投資家様は、のれん償却前のPERでの考え方が適切であると考えております。それは疑似的なIFRSでのPERと同じであるためです。なぜなら、のれん償却前のPERであれば、どの会計基準を導入してもほぼ変わらないためです。

つまり、当社が仮に将来的にIFRSを導入した場合、当然ながら当社に本質的な変化は無いにも拘わらず、各データベースで当社の当期純利益をベースとしたPERが突然下がり、割安になったような見た目になりますが、それは本来正しくないためです。従って、どちらの会計基準を導入しても変わらないのれん償却前のPERが適切であると考えています。

一方、のれん償却前のPERは、一般的なデータベースでは見られませんので、ご参考までに簡易的に当社ののれん償却前のPERを見る方法をご説明します。結論、当社の場合は、「当期利益のPER × 0.8倍 = のれん償却前 当期利益のPER」となります。

なぜなら、当社の今期予想ではのれん償却前 当期利益が54億円、当期利益が43億円ですので、約1.25倍の差があるため、通常のデータベースで見られるPERを1.25分の1すると(1/1.25=)0.8となるためです。

Tag: 2024年3月25日 回答