Net Debt/EBITDAの倍率は2025年1月期第1四半期末時点で1.6x、NEN社のM&A後は1.8xを想定とのことで、上限としている3.0x に近づいているが、今後も M&A のペースを維持できる のか。

M&A により一時的に Net Debt/EBITDA が上昇しても、対象会社の Debt Capacity の活用、対象会社の PMI による EBITDA 成長、既存事業の潤沢なキャッシュフローにより、Deleverage が急速に進みます。本日公表の M&A により一時的に今期末で 2.0x となりますが、今後追加的な M&A がなければ来期末で 1.5x、再来期末で 1.1x と、Deleverage が進む見込みと想定しています。
また、本日発表の株式交付によるシトラム社の完全子会社は、GENDA 株式を活用した M&A の第 1号案件です。これには以下のようなメリットがあるため、これを契機に活用して参ります。


①Debt Capacity を温存しながら M&A をすることが可能となります
当社は上場時点での Net Debt / EBITDA が 0.1x と、実質的にほぼ負債の活用ができておらず、資本効率性が低い状況となっておりました。そこから今まで、借入主体の M&A により適切なレバレッジを活用することで、一定の資本効率の改善を実現致しました。一方、ここからは借入一辺倒ではなく、Debt Capacity をコントロールをしながらの M&A 運営が必要となります。借入の対極として株式による資金調達がありますが、両者の中間的な手段として、今回の株式による M&Aは、M&A を戦略の中心に据える当社として Debt Capacity を温存しながら M&A を推進する有効な手段だと考えております。


しかし、株式対価による M&A は、Cash EPS の観点に於いて借入による M&A 対比で取得価額のバリュエーションがより一層重要となります。その点を以下の②にてご説明させて頂きます。


②当社 PER が対象会社 PER より高ければ、株式交付による M&A でも Cash EPS は向上します
株式対価の M&A に於ける PER と Cash EPS の考え方は上記の通りで、本日公開の M&A 資料にも詳細を記載しております。また、M&A の対価が株式と現金(借入)とのミックスとなる場合、対象会社の PER に株式での取得割合を積算した PER と当社 PER との対比となり、Cash EPS 増加のハードルは低下します。たとえば今回取得したシトラム社については、シトラム社の PER 5.9x に対し、その 80%分を PER 22x の GENDA 株式で取得することで Cash EPS は大きく増加致します(20%は既に借入で取得済み)。


M&A に於いて Cash EPS を重視する当社としては、株式交付の M&A は(取得割合を勘案後の)PERが自社対比で低い会社に限定して参ります。今後もこのような形で、①Debt Capacity を温存しながら M&A 戦略を進める上で、②当社の PER が対象会社の PER 対比で高く Cash EPS を向上させられる場合は、株式による M&A を有効な手段として考えています。
また、今回のシトラムへの株式交付の M&A には、①②に加えて更なるメリットがあります。


③GENDA 参画後のインセンティブともなります
売主でもあるシトラム社の代表者は、GENDA 参画後もシトラム社の代表者を継続致します。従って今回の GENDA 株式による M&A は、GENDA 参画後の株式価値向上に対するインセンティブとしても活用が可能となります。このように、対象会社株式の売主が M&A 完了後も GENDA にて事業を推進する場合、対価を GENDA 株式とすることでアップサイドを享受することが可能となり、M&A 完了後も GENDA の株式価値を向上させるインセンティブを持つことができます。


④大きくネットキャッシュであるシトラムに対する株式交付は、実質的に株式による資金調達となります
一般的な M&A では、対象会社に有利子負債があることが通常であるため、現金を差し引いた純有利子負債でもプラス(ネットデットの状態)となり、株式交付をしても対象会社の負債が加算されることが通常です。


しかし、今回のシトラムの株式交付による M&A 案件では、対象会社の直近期末時点で現預金 20.2億円に対して「無借金」であり、純有利子負債がマイナス(ネットキャッシュ)という状況でした。
結果的に、対象会社は企業価値 19.8 億円・株式価値 40 億円というバリュエーションとなります。従って、シトラムの株式価値 40 億円について、5 月 1 日に実行した 20%分の現金対価及び今回の 80%分の GENDA の新株発行は、19.8 億円がシトラム社のビジネスを取得することへの対価、残りの半分の 20.2 億円は実質的に同社の現金及び預金に対する対価となります。


これは、GENDAが株式による資金調達をしたのと同等の経済効果も併せ持っています。更に、今回は実質的にGENDAが株式による資金調達をしながら Cash EPS を改善する一手となります。また、対象会社のオーナー側としても、対象会社の現預金を個人で対象会社から配当として引き出すよりも、同現預金も含めて売却したほうが税務上も手取り金の最大化の観点から合理的でもあることから、今後も一定の再現性があるものと考えております。


①②の観点だけでも今後は株式による M&A を活用して参りますが、更に③④の要素が揃う今回のような案件も上手く活用し、Debt Capacity をコントロールして参ります。M&A を本業とする当社は、今後も M&A による「連続的な非連続な成長」及び Cash EPS を意識した経営を進めてまいります。


注:対象会社ののれん償却前当期純利益が黒字である前提。一過性の M&A 関連費用は加味しない前提。PER は Cash EPS ベースでの PER、つまりのれん償却前当期純利益での PER を示す。

Tag: 2024年6月27日 回答