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PLAYER ONEのM&AのEV/EBITDAマルチプルが、過去対比で割高である理由は?

結論、①定量面:北米における成長率が国内とは大きく異なること、②定性面:北米で日本IPを提供するプラットフォームとなり、日本のゲームセンターで起きた日本アニメIPによる変化を当社が北米で主導し、新たな市場を創り出すという戦略的意義が極めて大きいこと、が理由です。なお、当社のM&A方針に一切の変更はございません。

①定量面:北米における成長率が国内とは大きく異なること

まず、今回のEV/EBITDA 8.5倍という水準は、過去の国内案件と比較すると相対的に高いことは事実です。国内では、事業承継ニーズを背景に、魅力的なバリュエーションでのM&Aが可能なケースが多いのに対し、海外では必ずしも同様の環境にありません。

しかし、重要なのは表面上のマルチプルだけでなく、成長率を勘案して評価すべきという点です。たとえば、国内では、既存店の成長率は数%にとどまる一方、当社が国内でM&Aした案件では、過去に示した通りシナジーによって20〜30%の成長率を実現してきました。これに対し、北米で昨年取得したNENでは、既存店の成長率は「平均で+201%」という実績を上げており、国内とは全く異なる実績が出ております。

具体的には、今回の対象企業の直近EBITDAは18.2百万ドルですが、当社は中期的に35百万ドルへの成長を計画しています。仮にEBITDAが2倍に成長すれば、実質的な取得マルチプルは同様に1/2倍となります。将来的な成長を一切織り込まずに投資判断をするのも一つの規律ではあります。しかし、既に実績として現れている成長ポテンシャルを完全に無視するのは過度に保守的であり、むしろ株主価値の最大化に資する投資機会を逸するリスクに繋がります。

更に、株主価値の観点では、レバレッジを活用していることを忘れてはいけません。全社的なフリーキャッシュフロー(FCFF)に基づく投資の利回りは(相対的に国内案件が非常に高いのは事実ですが)絶対値としては十分確保できている上で、この案件では大部分を借入で賄う予定であり、株主向けのフリーキャッシュフロー(FCFE)は極めて高い想定です。

ここに関して、本日公表のCGSレポートを引用させて頂きますが、「Player Oneの買収ROI は、今期及び来期で予定されているゲーム機の入れ 替え・追加施策によるシナジー創出をドライバーに、FCFベースで約10%のCash ROIC水準と分析。また、買収資金の大部分を借入金で充当する予定(約8割で試算)で、買収ROEは中期的に約60%超まで高まると予想。これらから、資本コスト対比で十分な資本効率を連結可能とCGS は考えている。」(2025年4月30日Capital Growth Strategy社レポート(PLAYER ONE ROI分析)1ページ

仮にレポートで想定されているROE 60%となれば、株主の皆様に十二分なリターンを提供できると考えており、経営陣として見逃すべき案件ではないと考えております。

② 定性面:北米で日本IPを提供するプラットフォームとなり、日本のゲームセンターで起きた日本アニメIPによる変化を当社が北米で主導し、新たな市場を創り出すという戦略的意義が極めて大きいこと

もともと対象会社はCINEPLEX社が保有しており、当時から当社のロングリストには入っていたものの、国内とは異なり北米でのソーシング力が不足していたため、直接アクセスすることはできていませんでした。結果として、当該事業は一旦PEファンドに売却され、直後に当社が取得する形となりました。

当然ながら、取得価格はPEファンドの取得時より高くなったものの、それでも合理性がある背景には、海外勢には難しい一方で日本勢である当社には可能である、日本アニメIPを活用したPMIによる成長戦略があります。当社は、既存のゲーム機コンテンツで業績を伸ばすのではなく、プライズゲームを活用した成長が可能となります。

日本国内では、プライズゲームが急成長を始める2014年以前、ゲームセンター業界全体の市場は衰退市場でした。一方、それ以降は、プライズゲーム市場はコロナ禍を除き一貫して成長し、ゲームセンターは「日本アニメIPを軸とするプラットフォーム」へと変貌しました。

現在の北米のゲームセンターは、この2014年の転換点を迎える以前の国内ゲームセンターと同様、物理的な遊び場として機能しています。当社が、2014年以降に起きた日本で起きた、ゲームセンターの日本アニメIPのプラットフォームへの変革を主導することで、本件は当社にとって単なるM&Aではなく、「北米市場の未来」を創造する第一歩でもあります。

更に、日本アニメ市場は、海外消費が過去11年で7.5倍という急速に拡大を続けた結果、遂に2023年に歴史上初めて「海外」消費が「国内」消費を上回りました。そしてこの流れは、今後ますます拡大する見通しです。

それに対して、北米市場では、日本IPを活用したプライズゲームビジネスはまだ未成熟であり、供給が需要に追いついていません。今回のM&Aにより、当社は既に北米で120店舗のゲームセンターと約12,000箇所のミニロケを確保しました。北米の人口規模・経済力を踏まえれば、国内市場を大きく上回るポテンシャルがあり、この未開拓市場を日本アニメIPとともに成長させていく基盤を築いた形です。 以上の通り、今回の案件は単に価格だけを論じるべきものではなく、北米市場における成長率、日本IPを活用した未開拓市場の創出、将来的なロールアップ戦略、株主価値最大化に向けた長期的視点、を踏まえて、非常に意義深い投資判断であったと考えています。

Tag: 2025年4月30日 回答